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あらためて「はなたれ」の話。


今年の仕込みで「はなたれ」の生産が数年ぶりに戻ってきました!ということで、今回はせっかくなのでその「はなたれ」のお話。そもそも「はなたれ」って?っていう方にも、ぜひ読んでいただけたらと思います。












「鼻たれ」ではなく「初垂れ(はなたれ)」です。




焼酎は蒸留酒。麹に水と酵母を加えて発酵させた酒母(しゅぼ)に、米や麦の原料を加えてさらに発酵したものを醪(もろみ)といい、この醪を単式蒸留器で蒸留したものが焼酎になります。



蒸留を始めて、蒸留器から出てきた最初の一滴から序盤に抽出される原酒を「初垂れ(はなたれ)」と呼びます。大部分を占める中盤の「本垂れ(ほんだれ)」と続き、蒸留の終盤の「末垂れ(すえだれ)」で締めくくり。



初垂れは、蒸留したての非常に凝縮された原酒のため、アルコール度数は70度に上がります。

一般的なウォッカも40度くらいなので、かなり高いことがわかりますよね。



ちなみになぜ“垂れ”という表現なのかというと、読んで字のごとく原酒が蒸留口からツーっと垂れてくるから。



「はなたれ」と聞くと、鼻たれ小僧の「鼻たれ」?と頭に浮かびますが、これは焼酎の製造過程からの業界共通の名称なのです。









寿福の初垂れは、「武者返し」の“いのちのしずく”







寿福の初垂れは「武者返し」のもの。もちろん原料は米です。



武者返しの蒸留のたびに初垂れをとり貯め、最後に全部合わせてから43~44度ほどに和水。そのあと甕(かめ)で2〜3ヶ月貯蔵したものを、「杜氏きぬ子」として販売します。



香りは非常に高く華やかで、ぎゅーーっと凝縮された濃厚な味わい。



定番の武者返しとは、またひと味違った楽しみがあります。



おすすめの飲みかたは、瓶ごと冷凍庫に入れキンキンに冷やして、これまた一緒にキンキンに冷やしたショットグラスでちびちびと飲む。アルコール度数が高いので冷やすととろりとしたテクスチャーに。これはくせになります。



冷やすことで香りと味わいが閉じこめられ、温度が上がるごとに少しずつ開いていくのを楽しむのも乙でございます。



アイスクリームにかけて食べるのもぜひお試しいただきたい!いろんな意味でとろけます。



ちなみにこの初垂れ、1回の蒸留(約360リットル)のうち、わずか5リットルくらいしかとれません。



なんと全体の0.01%!!!



各蒸留ごとにせっせと初垂れをとり貯めていくのですが、最後に全部合わせても



「これだけ??!」



と造っているわたしたちでさえも思ってしまうほどの希少っぷり。



こんなふうに実感すると、さらに初垂れへの愛しさが募ります。









今年のテーマは“やさしみ”by. 杜氏・良太







最後に寿福で初垂れを造ったのは2020年の水害の前。もう3年も前になります。



今年「初垂れ仕込みました!」とみなさん報告できることは、わたしたちにとっても嬉しいニュースです。



そしてこの「初垂れ復活」とあわせてお伝えしたいのが、今年の初垂れはちょっとした新しい試みをしましたよ、ということ。



造り始めて20年以上経つ寿福酒造の初垂れ、例年は蒸留口から出てきてすぐの初垂れを取っていました。



杜氏の良太いわく、今年初垂れのテーマは



“やさしみ”



丸みがあり“ずっと飲める”やわらかい味わいを目指し研究した結果、今年は



初垂れを取る時間を少しだけズラす



ことに。



それだけのこと?と拍子抜けされそうですが、原酒はとるタイミングによって香りも味わいもどんどん変化していきます。



どのタイミングが一番良いか、初垂れが出始めてから5分~30分ぐらいまでそれぞれの変化をじっくりと吟味し、たどりついたのが



「初垂れ10分地点」



初垂れ出初めから10分くらい経過してからとり始めることで、エッジが立ちすぎないやわらかい香り、そして口当たりが良くほどよい厚み感の味わいに。



まさに目指していた“やさしみ”の初垂れを実現できました。



そのあとは甕の中で美味しく熟成。そしてついに今月リリースいたしました。



みなさまに今年の新たな「やさしみの初垂れ」を味わっていただけることが楽しみです。



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