2022年11月21日に開始した米焼酎「武者返し」がひと段落。3月13日からは気分も一新、麦焼酎「寿福絹子」の仕込みを開始しました。寿福酒造では例年、米→麦の順に造ります。
今回は3か月強に及んだ「武者返し」の仕込みの話と新たな試みについて少し。
今シーズンの「武者返し」の仕込み
蒸留してみてやっと最終的な出来がわかるのが蒸留酒。今年の造りは、麹(こうじ)の破精(はぜ)*も良く、醪(もろみ)も美味しいものができ、期待大の蒸留でした。
*破精[はぜ]:麹作りの際、麹菌を蒸米に散布して、菌糸が米に食い込んでいる状態をいう。(出典:SHOCHU PRESS)
蒸留後、通常は原材料の米そのものに含まれる油分で濁するのですが、今年はきれいに溶け込んでいて透きとおったものが!味わってみると、甘くて、コクがあり、お米の炊きたての香りがよくでたものに。
一言でいうと‥‥
「うまいっ!!!」
2020年の水害後に仕込んだ2回の米も素晴らしい出来でしたが、それを超えると確信。
実は今シーズンの「武者返し」の仕込み、序盤の12月はやや苦戦をしておりました。というのも、米の状態が例年とは異なり、蒸し加減が定まらず。蒸しが決まらないとそのあとの麹、醪造りに影響します。しかも昨年末の冷え込みが厳しかったため麹室(こうじむろ)の温度が極端に下がりやすく、麹自体の温度も若干低い状態でした。
米の炊きかたや水分、蒸しの時間や強さ、麹室温度などあらゆる条件を微調整しながら試行錯誤し、納得のいく組み合わせを模索もさくモサク。
写真は真剣な良太先生の見守り。
四代目絹子も登場です!
そして訪れる『歓喜の瞬間』。バチっと試みがハマったときは喜びもひとしおです。
その年ごとの原料や天候などの条件をして最高の状態を探っていくのが酒造りですが、今回はかなり手を焼きました…
ただ苦戦したぶんだけ、細かいところまで考え抜き、改良を加えたことで、できあがりが
「うまいっ!!!」
になったのかもしれません。
杜氏の良太いわく、
「過去最高に美味い武者返しができたかも」
とのこと。これから2~3年寝かせるので、みなさまにお披露目できるのは少し先ですが、期待してお待ちいただければと思います。
新たな挑戦『エクセレント』
蒸留のタイミングは繊細。じっと見計らいます。
SNSの方でもほんの少しご紹介しましたが、今回の「武者返し」の仕込みでは、2回だけ(一回の仕込みが360kg)麹を替えて造ってみました。
その名も『E型白麹』。Eはエクセレントの頭文字で、ここ10年で登場した比較的新しい麹です。
ただこの麹、名前の優雅なイメージとは少し異なり、なんとも頑固な麹でした。蔵癖もあるので一概にはいえないのですが、寿福の蔵と出逢ったE型白麹はなかなかの強者に。
時間も労力も、通常の1.5倍くらい手のかかる頑固ちゃん。
麹の品温が上がりにくく、酸が出にくかったため、健康でしっかりとした状態にもっていくのに非常に気をつかいました。
醪(もろみ)の様子。一生懸命に発酵していてかわいらしい…
仕上がりは、いつもの「武者返し」の旨味は保ちつつも、香りはよりフルーティで優し柔らかい味わいに。
水害やコロナなどドタバタと過ごしてきたここ数年、今回の仕込みからやっと少し余裕がうまれ、新たな挑戦ができました。
ただ麹を替えるだけで、こんなにも味わいが変わるんだという面白い発見。そして、なによりも今後に向けての種まきとして有意義な試みでした。
こちらのE型白麹の武者返しはテイスティング後、度数を決め、数量限定で特別発売する予定です。おすすめの飲みかたもご紹介しますので、どうぞお楽しみに。
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